減薬と断薬

 

SRSを受けるためには、術日の少なくとも2週間前には服用中のあらゆる薬をすべてやめなければなりません。煙草や酒やサプリメント、ホルモン剤も駄目。すべてやめます。さもなければ麻酔が効かなかったり、術中に使用する薬剤と身体の中に残っている薬剤とがバッティングして思わぬ事態を招きかねません。
別の頁でも述べましたが、私は長いこと鬱病とパニック障碍、睡眠障碍等を患っていて、そのための薬を常用しています。手術のために、これ等の薬を一時断薬しなければなりません。
しかし、鬱病等精神科領域の薬は急にやめると離脱症状が出て大変なことにもなり得るので、主治医と相談の上、断薬の計画を立てました。手術日は2009年2月10日。それに合わせた日程が以下の通りです。

【2008年10月4日〜2009年1月9日】 ※通常量
朝:リーマス200mg × 1錠
昼:リーマス200mg × 1錠
夜:リーマス200mg × 1錠 + トリプタノール10mg × 1錠 + デプロメール50mg × 3錠
眠前:ハルシオン0.25mg × 1錠 + ロヒプノール1mg × 1錠 + デジレル25mg × 1錠 + トリプタノール10mg × 2錠

【2009年1月10日〜1月23日】 ※通常量を半減
朝:リーマス100mg × 1錠 + デプロメール25mg × 1錠
昼:リーマス100mg × 1錠 + デプロメール25mg × 1錠
夜:リーマス100mg × 1錠 + デプロメール25mg × 1錠 +トリプタノール10mg × 1錠
眠前:ハルシオン0.25mg × 1錠 + トリプタノール10mg × 1錠
*リーマス600mg/日→300mg/日
*デプロメール150mg/日→75mg/日
*トリプタノール30mg/日→20mg/日
*ハルシオン0.25mg/日→0.25mg/日(変わらず)
*ロヒプノール1mg/日→なし
*デジレル25mg/日→なし

【減薬期の経過 : 14日間】
減薬開始直ぐに睡眠に変化。眠りが浅くなり、二時間おきに中途覚醒。浅眠のためか朝の目覚めが遅くなる。
減薬4日めになると気力が下がり、行動力が落ちる。これまで行っていたトレーニングができなくなった。
気分降下(抑鬱気分)やパニック発作などの精神症状は出ないものの、目眩や頭痛等の身体症状が出はじめる。長時間の外出ができなくなる。
減薬6日めには集中力が乏しくなり、本を読んだり文章を書いたりが難しくなってきた。「考える」という行為が困難。複雑な内容の会話は不可能になる。
筋緊張性頭痛とともに風邪をひいているような倦怠感、疲労感が常に身体にある。目眩もあり、外出は短時間でもできなくなる。入浴をする気力もなくなり、入浴頻度が落ちる。
減薬7日め。食事をする気力がなくなる。本が読めなくなる。字を目で追うが内容が頭に入らない。眠りが不規則になり、充分な眠りが得られないために抑鬱が幾らか出はじめる。
減薬すると心身ともにしんどくなるのだが、減薬11日めになるとそのしんどさに身体が慣れてきた。しんどかったりしんどくなかったりという起伏はなく、安定してしんどい。それをやり過ごすために一日中床に伏せる。疲れやすいために二時間起きて活動しては二時間伏せるというような生活。
「考える」という行為が困難になっているが、同様に「記憶する」ことも難しくなってきた。 健忘が鬱病の症状の一つだとは判っているが困る。 何か思いついて「これは忘れないようにメモしておかなければ」とメモ帳を手に取った瞬間に「メモしておかなければならない何か」が脳裏から消えてしまう。「忘れる」ということは何とも寂しいことだ。
減薬最終日(14日め)。混雑した路線バスや病院の待合室でパニック発作(過呼吸)を起こしそうになることしばしば。渡航前の最終通院日だったのだが、3時間程度の外出で目眩と頭痛がひどく、身体が重く背骨が軋み、倒れる寸前にまでなる。帰宅後直ぐに横になったものの精神状態は絶望的になり呼吸も苦しく、過呼吸直前。小一時間眠ることで何とか発作を回避。
疲れないこと、疲労を回復させることで精神・身体症状を軽減・回避できそうか。

【2009年1月24日〜帰国】
一切服薬なし
*リーマス300mg/日→なし
*デプロメール75mg/日→なし
*トリプタノール20mg/日→なし
*ハルシオン0.25mg/日→なし

【断薬期の経過 : 14日間】
断薬1日め。早速精神症状が出る。 何の前触れも理由もなく「すべて自分のせい」で「申し訳ない」気になる。少し離人症めいた部分もあり、主体である自分に対して小さな第三者的自分もいて、「これを理由に何故そう(「申し訳ない」とか「死んだ方が」とか)考えることが可能なのか?」と問いかけていることもあるので、悲観的・絶望的に考えていることが「正常な思考ではない」ということは、ぎりぎり自分で判っているようだ。
しかし苦しいことに変わりはない。
疲労限界が減薬期よりも短くなっている。活動限界は小一時間程度、それだけ活動したら横になるなり眠るなりしないと精神症状が出る可能性が高くなる。
断薬4日めにもなると一日のほとんどを伏せって過ごすようになる。運動量が著しく少なくなるのだが、だからと言って食事量を控えたりはしない方がいいようだ。
「眠る」という行動にもやはり体力が必要で、体力が落ちると眠りにくくなる。眠る体力を落とさないためにも食事はきちんとした方がいい。薬を服まない具合いの悪い身体ではなかなか身の周りのことをきちんとはできないが、腹を満たすだけの食事ではなく、栄養がきちんと摂れる食事をした方がいいのは言うまでもない。
常に目眩、手脚の震え、関節(特に首と肩)の軋みがあり、身体から疲労感が抜けない状態が続くのだが、4日めになると身体がその状態に慣れてきたようで、精神症状が出なくなってきた。ひどく疲れる前に横になる(できれば眠る)ことで概ね精神症状は回避できるのではないかと考えられる。
身体を起こしていられる制限時間はどんどん短くなってきていて、最短30分、最長90分程度。ずっと伏せっているために身体各所の筋力が衰えてきていて、余計に疲れやすい身体になっている。
断薬6日めにして、薬を服まないことのしんどさにようやく慣れる。 寝て起きて飯を喰うことができる程度の毎日を過ごす。それ以外のことは、しようにも身体の不具合いが多すぎてできない。いつ眠れるかが相変わらず判らないのだが、途切れ途切れながらまとまった眠りを得ることができるようになったので、御陰で死にたくなるほどもしんどくはない。
巧く入眠できない。 欠伸が出たり目がしょぼしょぼしたり、健康なときなら何となく感じる「眠気」というものがない。だから眠るきっかけというものがなく、起き続けてしまいがちなのだが、そうしていると目眩や頭痛や身体の軋みがひどくなり、身体を起こしていられなくなる。そういうときが眠るチャンスである。と言うより、眠らないとしんどくてたまらないのだ。
身体がいろいろしんどくなるのは、身体が眠いのだ。これ以上眠らないでいると危険だから起きていられなくなるのだろう。こうなったら寝る体勢を整える。
しかし、健康なときのようなスムーズな入眠はできない。身体が眠いので身体は割りと直ぐに入眠するのだが、脳の入眠が巧くいかない。意識が残っているのに身体は眠っている状態を、脳が「入眠完了」と誤判断してしまうのか、まだ眠っていないのに呼吸数が勝手に落ちて苦しくて覚めてしまうことしばしば。この息苦しさが怖くて眠るのが厭だと思わなくもないが、眠らないとそれ以上の苦しさがあるので難儀だ。
断薬10日め。浅く短い眠りをつぎはぎすることは以前と変わらないが、ときどき覚醒しながらもまとまった時間(3〜6時間程度)眠れるようになってきた。充分な睡眠が安定して取れるようになってくると、食欲が帰ってくる。
よく寝てよく喰えば不調はましになる。しんどくないということはそれだけで倖せだ。
断薬14日めも10日めとたいして変わらず、気になるのは身体が弱っていることが日常の端々で感じられるのが多少の不安になっていることくらいだ。背筋が弱っていて身体を支えきれずに頬杖が多くなったとか、動けない上に不適切な内容の食事を摂らざるを得ないために目に見えて筋肉が減り脂肪が増えて身体が重くなり動きづらいとか、肥ってきたために食事中に口腔内を頻繁に(しかも相当な力で)噛んでしまって痛くてならないとか。 身体はしんどくて当たり前、横になっていればそれは幾分緩和されるということで安定。疲れなければ精神症状は出ずに済んでいる。

【薬をやめることについて】
このように、病気の症状を抑えてくれている常用薬をやめてしまうということには、大変な苦しみを伴います。自分一人では生活も儘ならなくなり、周囲の人々に多大な迷惑をかけることになります。自分の苦しさと他人の迷惑、これを怖れないなら、鬱病をおしての海外でのSRSも不可能ではありません。しかし、身体の苦しさも他者に対する心苦しさにも、相当の覚悟は必要です。
また、鬱その他精神疾患を持ちながら断薬を経てSRSに望もうという人は、主治医との充分な話し合いを欠かさぬように気を付けてください。



 

<< もどる  ■と じ る  つぎへ >>